センター長あいさつ
佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センターは、医学部肝疾患医療支援学とともに平成24年1月に設立されました。これまで佐賀県や市町、医師会をはじめ多方面の皆様方の全面的な協力のもと、長年に渡り続いてきた佐賀県の肝がん粗死亡率ワースト1位脱却を目標に、肝炎・肝がん対策に取り組んできました。
当センターは初代センター長である江口有一郎特任教授を中心に、
1.医療機関のみならず、県民の皆さまへの肝がん・肝炎に関する講演や肝炎ウイルス検査の勧奨などの多角的な啓発活動
2.佐賀県が進める肝炎医療コーディネーターの養成・活動支援への全面的協力
3.県内の肝疾患データ解析に基づき、ソーシャルマーケティング手法を応用した肝炎・肝がんの予防や治療に資する活動や研究
を行ってきました。また平成26年度からは厚生労働省肝炎等克服政策研究事業として、肝炎ウイルス検査受検から受診、受療に至る肝炎対策の効果検証と拡充に関する研究を遂行し、佐賀県で開発された肝疾患啓発手法の向上と全国的及び国際的な展開を行ってきました。そして県民の皆様、患者様、医療の現場や施策に関わる全ての方々のご努力が実を結び、平成30年度の佐賀県肝がん粗死亡率は20年ぶりにワーストワンを脱却することが出来ました。
肝炎・肝がん対策は新たなステージに入ります。ワーストワンは脱却したものの、依然として肝がん粗死亡率は全国平均よりはるかに高く、これを如何にして低下させるかが課題であり、当センターの使命でもあります。また、肝炎ウイルス検査未受検の方が、働き盛り世代を中心に、多数存在することが判明しております。特にC型肝炎治療の進歩で、ほぼ全例でウイルスを消失させることが出来るようになったものの、治療後に肝がんを発症し、早期発見に至らなかった患者さまも多数おられます。さらに肝がんの原因として、ウイルス性肝炎を凌駕する勢いで、メタボ肝がんとも呼ばれる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が原因と考えられる肝がんが全国的に増加傾向にあり、佐賀県も例外ではありません。また、B型肝炎やアルコール性肝障害を含む、様々な慢性肝疾患の検査受検、受診、受療の環境改善は継続して必要です。
県民の皆さま、患者さま、佐賀県、厚生労働省及び関係部署のご協力を賜りながら、当センターが肝炎・肝がん対策に貢献できるよう、そして一人でも多くの患者さまが治療につながり、佐賀県の肝がんがゼロとなるその日まで、我々は歩みを止めません。皆様の暖かいご支援と地域のニーズにお応えできるよう、当センターの役割を、熱意をもって果たしてまいります。